– ロープワーク高所伐採 –

伐り倒す場所がなかったり安全な伐採が難しかったりする巨木を、理論と最新の技術&道具を駆使して樹上で伐採する特殊伐採技術です。

「空師」が町火消なら、「高所伐採技師」はエアハイパーレスキュー

林業を知らない皆さんには、まずは「高所伐採」の意味からご説明いたしましょう。 日本全国の神社仏閣、とりわけ名刹・古刹の境内や並木には、樹齢数百年の巨木が何万本も存在し、なかには幹回り3m、樹高30mを越える枯木もあります。これを放置すればいずれ倒れて、人命や重要な国宝に危険を及ぼすのは必至。伐採しなければなりません。

でもどうやって? 損なってはいけない文化財・ご神木に囲まれ、クレーン車の乗り入れも不可能、転げ落ちそうな傾斜地に生えている可能性もある・・・そんな伐るに伐れない巨木を、巧みに伐り出すのが「高所伐採」。従来は、「空師」と呼ばれる匠が、腰につけた命綱に身を預けて行う、命がけの職人技でした。

高い樹木にスルスルと昇り、時に梢から梢へ、猿のように乗り移る。手ノコやチェーンソーで扱いやすい長さにカットし、狙い定めた場所に正確に伐り落とす技は、森林の「町火消」。磨き抜かれた職人のいなせな姿に憧れる若者は、今も確かにいるはずです。ただし危険である上に、伝承し難い極意満載。匠も後継者も不足し、伐れずに放置される樹木が増えて行く中、台頭してきたのが「ロープワーク高所伐採技師」です。

その理論と技術は世界標準。アメリカ、スイス、ドイツ、オーストラリア等、世界中の仲間たちがネットを通じて新たなノウハウを披露し合い、切磋琢磨することで、技術も道具も常に進化し続けています。作業の基本は二人一組。クライマーとグランドワーカーが協力し、安全性と作業効率を追求した装備に身を包んだ姿は現代的消防士。エアハイパーレスキューを思わせます。

近年は神社仏閣等での需要に加え、木の成長や山の手入れ不足(間伐遅れ等)により、家の裏山や道路脇の危険木伐採、河川沿い、高速道路脇等の高所伐採の需要が増えて来ています。今後は全国的にますます必要とされるものになって行くでしょう。

講習会の様子